本当に日本人なのか?
1994年9月、シベリアの古い町・トボルスクに出張した。トボルスクには石油関連のコンビナートがあり、そこに、サービス・センターを新設した時の「開所式」への出席の為である。
工場を見させてもらったら、15年以上前にシステムを設計し、納入した、「LPGの貨車出荷管理システム」が稼働していて、驚いた。
井上靖の小説「おろしゃ国粋夢譚」では、主人公の「大黒屋光太夫」がエカテリーナ女帝に「帰国の支援」を願い出る為、シベリアを横断して、サンクトペテルブルグまで旅をした時、この、トボルスクの教会に宿泊したという記述がある。
昼は、サービス・センターで「開所式」を行い、夜はコンビナートのホテルのパーティ会場に客先を呼んで、パーティを開催した。
パーティは、コンビナート長とのウオッカで乾杯で始まった後、ご出席いただいている多くの工場長と乾杯を重ねて回るのだという。
我々にはロシア担当の商社マンが通訳として付き添ってくれて、私に「乾杯で、ダウンしたら、ホテルの部屋までお連れします。」と言ってくれた。
ウオッカでの乾杯の経験は無いので、全く自信は 無かったが、何故か、客先全員と乾杯して、自席に戻り、その後も飲み続けた。
隣席に座っていたコンピナート長が「あなたは本当に日本人なのか?」と聞いてきた。
「本当はロシア人です。」と冗談を言うと。「乾杯の後、自分の席に戻ってきた日本人は見た事がない。」と言う。「酒に強い」という評判を立証した形になった。(現在は禁酒中)
彼らは陽気で、酔うほどに、いい声で、ロシア民謡を歌ってくれた。
歌劇・イーゴリ公では、ロシアの首長・イーゴリ公が韃靼人の捕虜になる場面がある。この宴席の出席者の顔を見ると白系ロシア人は少なく、韃靼人の血を引く、東洋系の顔の方が多かったし、体格も同じ程度であった。
帰途、モスクワでは休日だったので、市内観光(右下の写真)とボリショイ劇場(最下段の写真2枚)でのオペラ鑑賞が出来た。
オペラは「スペードの女王」で、本場、ロシア人のバス歌手の凄さを堪能できた。偶然、このオペラのヴィデオテープを持っており、ストーリーを知っていたので、楽しかった。
後日、彼らが来日した時、ウオッカを土産に頂いた。「ウオッカ好き」と思われたらしい。